月刊ハコメガネマガジン

好物はカレー。

誰しもが一度は通る道の話

サバゲーやろう。サバゲー

昼休みにコーンスープ片手に優雅なお昼寝タイムを決め込んでいた私の元に、無遠慮なる先輩が要件のみの極めてシンプルな短文で話しかけてきた。脈絡もないとはこのことで、この人に限っては今に始まったことではない。慌てず騒がず。端的に答える。

「イヤです」

そして私の昼休みが終わりを告げた。


詳しく話を聞いてみると、どうも何の拍子か、「あっサバゲーやりたい」と思ったとの事だった。迷惑千万、はた迷惑な話である。しかも当人はサバゲーをやったことは一切ない。もちろん私もない。本当に唐突に「あっ銃が撃ちたい」と思ったという話だ。話だけ聞けばこの上なく危険人物である。本当、韓国でもサイパンでもハワイでも行って試射してくればいいではないかと思う。

だがまあ、話としてまったく興味が無いかと言われれば嘘になる。オトコノコだもの。武器や兵器には人並みの興味はある。

しかしいかんせん知識がない。「チームに分かれて撃ち合うんだろ? 一人じゃ出来ないから一緒にやろうよ」と猫なで声で言ってくる。一人じゃ出来ないが二人でも大差ないだろう。だいたい十人規模ぐらいでやるであろうことは想像できるが、私の中の知識も大差ない。

それにお金がかかることは知っている。新しく始めようとすれば10万円ぐらい掛かるんじゃないかと勝手に思っている。最低限の装備を揃えるだけでもその半分は行くだろう。「銃が撃てればなんでもいいよ!」やかましい。危険人物は黙ってなさい。誤解されるからそのフレーズを私の職場で連呼するな。

仕方がないので、昼寝を中断して、スマホに向かい、二人して調べていく。

必要な物は何があるのか、どれくらい掛かるのか、そもそもどんなルールなのか、遊べる場所は近場にあるのか。

調べてみてわかったのは、やはり装備一式を最低限揃えようとするとだいたい5万円前後、1回遊びに行けばランニングコストと設備の使用料と交通費で1万円ぐらい、近場に屋内フィールドがあり、屋外フィールドも車で1時間ぐらいの場所にあるみたいだ。ボーナス前提で考えればまぁ初めれないこともない、といった塩梅だ。

なるほど、こんなものなのか…と一通り調べ終わって先輩の方を向けば、一人で猛烈な勢いでスマホと格闘している。

「何調べてるんですか」
「これ、昨日見てたんだけど、すごいよな」
「…これは…」

セクシー画像だった。

エロ画像とは行かないものの、ミリタリ系のセクシー画像集だった。

何の事はない、「サバゲーに行けばこんなセクシー美女とお知り合いになれるかもしれない!」と思っただけの話だ。

「いや、すごくないです。完全にコスプレじゃないですかこれ」
「なにおう! 普通に着こなしてる可愛い女の子だって居るだろうがよく見ろ!」
「いやだからそれも…ってこれすみぺじゃねぇか! これはコスプレじゃないかもしれない!」
「ほれみろ。やっぱそういう子もいるんじゃないか」
「これは確実に特殊な例です! 詳しく語ると色々規制に引っかかりそうだから言いませんけどこれを例に上げるのはダメです。統計学の先生が怒り狂いますよ」
「可愛い子いっぱいいるのにな…」
「や、確かにいるにはいるでしょうけど、こんなど田舎じゃ無理ですって。東京近郊か、少なくとも関東圏じゃないと」
「そういうもんか…」

と言うやり取りのあと、随分意気消沈として先輩は去っていった。まさかすみペの画像を見せられるとは思わなかった。よく知らないが、サバゲーの経験があるのだろうか。

ともかく、先輩は興味を無くしたようだが、私はなんとはなしに興味を持ち始めている。また無駄遣いの予感がしないでもないが…。

誰か詳しく教えて下さい。