月刊ハコメガネマガジン

好物はカレー。

みまちがいといいまつがい

果たして、「ノーバン」という言葉は、市民権を得ている言葉なのだろうか。


個人的な見解を言わせてもらえば、未だ市民権を得ていないように思う。ノーバンというのは、ノーバウンド、要するに地面につかずに目標から目標に対象を移動させることを指す。小学校の時分、ドッヂボールでは、一度地面についた球に当ってもセーフというルールがあったため、地面すれすれでキャッチに失敗した時に「ノーバンだ」「いや今のワンバンだからセーフ」だの、熾烈な言い争いが勃発した記憶がある。(ワンバン=ワンバウンドで、地面についている意)注釈入れるまでもない。

私の灰色の脳細胞の記憶が定かであれば、時分で「ノーバン」と発言したのはその時が最後であり、時期的にいえば小学五年生であり、ゆうに20年前である。それ以来、発言することもなければ耳に入ることもなかったのだ。高校生になって性懲りもなく、いちごホイップクリームサンドなどというチャラチャラしたデザートサンドイッチを賭けてドッヂボールした時にはそんな発言は出なかったように思う。

だから違和感なのだ。ネットニュースに「ノーバン」の文字が踊っているのが。

そして、その記事見出しが「橋本環奈ノーバン始球式!」となっているのだ。使い古された悪意の話はここではしないが、明らかに字面の誤認を狙ったものであることは言うまでもない。そして見るたびにリンク先をクリックしてしまうことも言うまでもないだろう。わかっている。わかってはいるのだ。いわゆる、かっぱえびせん的な魔力がそこにある。

もちろん、苦々しく思うことはあっても、それはあくまで自分に対してである。そういった「性」に対する部分は、私たち技術屋にとっては技術革新の要となりうるもので、それが商売の種になることは百も承知している。皆、口に出さないだけでその認識は漠然とながら持っているだろう。とにかく、そういった表記でアクセス数を稼ぐビジネスモデルについて文句はない。

私が苦言を呈したいのは、少しずれた部分にある。

「こないださ、またやっちゃったんだよ」
「何をですか?」
「わかっちゃいる…わかっちゃいるんだけど、つい画面に出たらクリックしちゃうんだよな。なんでだろうな。男の性なのかな…。しかもみんなクリックするもんだから、いつまでたっても注目記事から消えなくて、同じ記事を何回も何回もチェックしちゃう。その度に自分の間抜け加減が際立つんだよな…」
「ああ、ノーパン始球式の話ですか」
「……」
「……」

居酒屋だったから良かった。

あれが会社の休憩室とかだったら目も当てられない所だった。

見間違いによるサブリミナル効果で、ごっちゃになった。


ノーバンとノーパンを見間違う効果を狙うのはいいのだが、発言する際は気をつけようと思う次第でございますので、どうかそんな冷めた目で私を見ないでいただきたい。

ていうか君が振った話題だろうに。