月刊ハコメガネマガジン

好物はカレー。

おかずのみ二つ買えばいいんじゃないかという話

弁当屋で悩むのだ。


弁当屋で悩まず注文できた試しがない。今日は上天丼だ、豪勢にエビ二本付けてやろうとほくそ笑んで弁当屋の自動ドアをくぐった瞬間、肉野菜炒め弁当を持った客とすれ違い、その食欲をそそる香りで一瞬にしてエビが駆逐され、メニューの海に投げ出されるのだ。我ながら意思が薄弱である。

死にそうになりながら真夜中と言って差し支えない、通行人も車すら通らなくなった闇世の中帰宅。スーパーは閉まってるし、コンビニの弁当はまともなのが残っていない。神は死んだのかと思わず天を仰ぐが、まだ一つの希望が残されていることに気がつく。

私の家の近くの弁当屋はなかなかにキアイの入った営業をしており、朝は9時から夜は12時まで営業し、ほぼほぼ年中無休という、労働基準法に抵触どころか真っ向から挑みかねない気迫を見せている。シフト制を組んでいるのだと思いたいが、私がいつ行っても同じ人がいる。深くは触れない。

そんな時間に弁当なんて食べているから太るんだという指摘も無きにしもあらずだが、腹が減っては戦ができぬ。と言うより、食べないと日々のストレスの消化がままならない。

まあ、結局唐揚げ弁当かのり弁当か天丼になるパターンが多いのだが。悩む割に結局注文するのはいつものやつだ。

思うに、私はこの弁当屋に安心を求めているのだと思う。

それこそ、チェーン店ではあるが、小学校の時から食べ続けている味ではある。母の味には叶うべくもないが、一人暮らしの男にとって懐かしい味なのは事実だ。

言うならば、信頼していないわけではないが、やはり安心を取りに行ってしまうのだと思う。アイスを買う時に何種類か新作を試すけど結局最後にガリガリ君をかごに入れるあの行為に似ている。失敗したくないのだ。

それは面子というよりは、「後何回こんなアイスやご飯が食べられるんだろう…」という思いに起因する。年々胃が弱ってきて、焼肉だって酒だって全盛期とは比べるべくもなく食べれなくなってきている。この味を楽しめるのは、残り少ないのかも。そう思うのだ。

一期一会。たかが食事されど食事である。悔いのないようにいきたい。


…という話を友人にしたら、「Lサイズのピザとサイドメニューにアイスまで食えるやつが何トチ狂ったこと言ってんだ」と呆れられた。

まあ、そりゃそうである。