月刊ハコメガネマガジン

好物はカレー。

目からローションが溢れ出る話

一人で映画に行くことがない。

こと他人とのコミュニケーションにおいて、映画の話題というものは非常に都合がいい。時事ネタでもあるし、芸能界のことに興味がなくても、文学・芸術的な側面からの意見も交えることが出来る。情報番組でも取り扱われるし、一般新聞にだって毎日情報が載る。電車の吊革広告にだって載っている。要するに、よほどアンテナの感度が低い人間以外は、それなりの確率で会話が弾むのである。

だが、私は一人で映画を観に行くことをしない。必然的に、「実際に見ている映画」というものは、殆ど無いということになる。

嫌いではない。というか、映画を見ること自体は好きなことの部類に入るだろう。だが、休みの日に映画館に出向いて行って、1,800円を払い、見知らぬ人間と暗闇の中で映画を見ることを選択するかと言われれば、答えは否である。よほど気になる映画であったら別かもしれないが、私の記憶にあるかぎり、一人でその行動力を発揮したことはない。

「いいじゃん一人でも見に行けば」と人は言う。
「一人映画なんて、お一人様シリーズの中では難易度低い方じゃない」とも言われる。

だが、そういう問題ではないのだ。

いや、お一人様シリーズをしている自分が嫌だなどというケツの穴が小さいことを言っているのではない。断じて。

そうではなく、映画を見た後に何も話せないのが嫌なのである。

自分のことをレビュアー人間だと言うつもりもないが、映画を見て「面白かった!」「イマイチだった…」だけでいいのだ。感想を言いたい。

別に一人ごとのようにつぶやいてもいいのだが、家族連れ賑わう休日の映画館から出てきてブツブツ一人ごとを嗜んでいるのは確実に危険な人であろう。それがサスペンスや推理モノならまだいい。頭を空っぽにしてみるべきコメディやキッズたちが「がんばれー!!」と声援を送るニチアサアニメの映画だったらどうする。親御さんから通報されること必至である。

かと言ってツイッターなんかで延々とまとめるのも味気ない。感想を書き連ねるのは悪いことではないし、ブログやってる人間が今更何を言っているんだと思わないでもないが、端的にいうと「メンドクサイ」のだ。

ある映画の好きなシーンがあるとする。そのシーンが何故好きなのかを分析すると、前後の話のつながりや、果ては自分自身の経験や主観が入ってくる。感想を言うということはそういうことなんだろうが、それを一語一句書き出していくのはこう、なんというか、妙にこっ恥ずかしい気がするのだ。

要するに、私は一人で映画を見に行くとフラストレーションが溜まるタイプなんだろうと思う。


「…でも隣で泣かれるのは面倒くさいから一人で行ってくれ。美少女の涙はダイヤモンドだが、お前の涙はローションだ」
「んじゃあ泣けると噂の「君の名は。」を見て、俺とローションまみれになろう!」
「ならねぇよ。誰得だその絵面」


ローション相撲に興味がある人、お待ちしております。