月刊ハコメガネマガジン

好物はカレー。

地方民にとっての「東京」はとかく広大であるという話

我々は「東京」という言葉を、随分と広い意味で使いすぎているのではないだろうかとふと思った。

例えば、東京ディズニーランドである。随分と有名な話ではあるが、ランドは東京にはない。千葉の浦安である。だが、東京という名前を関している。これはもはや、「東京」による千葉への侵攻の体ではないのか。浦安市民は「今日一日ランドは浦安市民のものだぜヒャッハー」とか言っている場合ではない。明らかな越境行為、世が世なら周辺の国(県)を巻き込んだ大戦とかしていてもおかしくない事態だ。

ということを考えたのも、世間一般で言うお盆という期間が過ぎ去り、田舎に帰って墓参りをする風習はどこへやら、やれ観光だ、やれ野外ライブだと日本の夏を謳歌し、真っ黒に焼け焦げた人類たちが出社してくるのが今週の出来事だったからである。まあ、お盆期間中インドアを決め込んでいた私は人のことをとやかくは言えないが、気になったのは「東京行ってきたー」という言葉である。

「お土産ありがとーどこ行ってたの?」
「東京行ってきたの」
「へー東京のどこ?」
「大仏見てきた! 大仏!」
「大仏…?」
「知らないでしょー奈良以外にも大仏はあるんだよ!」

そこまで来て私の脳の回転が追いついた。

まさか鎌倉の大仏の話をしているのではあるまいかコヤツは。

そしてよくよく話を聞いてみると、横浜の中華街に行って湘南のビーチに行って鎌倉に行ってという、まぁ夏のお手本のような観光地巡りをしていたことが判明。人がゴミのようだっととのコメントをいただく。そりゃそうだ。ビーチなんか芋洗い状態だったろうよ。

そしてそこからが問題だった。

「いやだから、横浜も鎌倉も東京じゃないんだって」
「でもだって新幹線東京で降りたもん」
「そりゃそうだろうけど! そこから車で移動したんでしょ?」
「車で移動はしたけど、県をまたぐほど移動はしてないと思うもん」
「何の根拠があってそんな自信満々なの…」

とにかく人の話を聞かない。しまいには「鎌倉に大仏あるの知らなかったんでしょ」と事実無根の名誉毀損までしてくる始末。このアマ調子乗りやがって、と思いながらも、公平を期すためにもうGoogleで検索かけよう、と相成りました。

結局そのおかげで私は大勝利を収めたのだが、件の女史はご機嫌斜め、八つ当たりも辞さない構えで不機嫌になったので、やっちまったと後の祭りの後悔をしかけたのだが、

「そういえば君も東京行くって行ってたよね」
「え? まあ。今週末行くけど…」
「東京のどこいくの?」
「渋谷」
「…渋谷だけ?」
「渋谷に行って、お台場行って、みなとみらいに横浜中華街かな」
「ほらー! 横浜行ってるじゃん! 神奈川県じゃん!」

覚えたての「横浜は神奈川県」という知識で全力の反撃をしてきた。確かにそうなのだが、一応は渋谷で用事を済ます予定の身としては釈然としない。

ひとしきりその主張をした後、気が済んだのかお土産を片手に何処かへ行ってしまった。いや仕事しなさいよ。


兎にも角にも東京。地方民からすれば、関東ぐらいに行く→東京に行くと表現していることは否めない。ヘタしたら、名古屋以東から仙台以南を「東京」と呼んでいるかもしれない。

というわけで、東京に行ってきます。