月刊ハコメガネマガジン

好物はカレー。

目的と手段のディスタンス

ドリルを買いに来た人が欲しいものは、ドリルではなく穴である。っていう有名な言葉がございますが。

 

割とそんなことはないんじゃないかという気がしている今日このごろです。だってドリルかっこいいじゃないかと思う自分は正しくグレンラガンに毒されています。螺旋エネルギーさえあればコロナすらおそるるるに足らぬ。噛んだ。

 

要するに手段のほうが目的になることもままあるということです。それこそ、高度に発達した社会が生み出す余裕に起因するものだとは思うのですが、そうなっちゃうんだから仕方ない。他のよく聞く例で言えば、殺人そのものが目的になっちゃったシリアルキラーとか、僕のようにガンプラを作ることだけが楽しくて完成品は特に興味はないとか。ええ、僕は今自分をシリアルキラーと同列に並べましたが、大体あってます。

 

前述のドリルに関しては、いわゆるマーケティング技法の一つとしての言葉なんですけど、目的と手段を履き違えないで、きちんとした顧客満足を得なさいみたいな、僕が苦手とするタイプのありがたいお言葉なわけです。初っ端から天の邪鬼と化している時点でお察しですけども。

 

ただまあ、この目的と手段っていうのは、なかなか奥が深いものでして。人それぞれ、同じ行動をしてもその先にある目的は千差万別。だから、それ以外の状況観察や話術によって、適切な目的を割り出さないといけないというオハナシなわけです。

 

前に、会社のオフィスフロアで見慣れない若者がウロウロしているのを見かけたんですね。

 

何してるんだろう、と彼の動向を仕事を放り出して眺めていると、どうも何かを探しているようで、フロアをキョロキョロ見回している。で、行ったり来たり。

 

ははあ、これはあれだな。新人君だなと目星をつけまして。いやぁーしょうがねえなぁ、フロアマップも持たずに一人で違う部署に突撃するなんて無謀にもほどがあるんじゃねぇの新人君。よっしゃいっちょ助けてやっかと先輩風を暴風並みに吹かして近づいていったんですよ。

 

どうしたどうした、なにか困っているのか?

 

聞けば、応接室に行きたいらしい。なるほどなるほど。

 

ここで頭脳明晰、聡明な僕は大体の仮説をたてるんですよ。こいつは新人の営業マンで、来客対応中の先輩から「ついでに紹介するから名刺持って応接室に来い」と言われて慌ててフロアに来たものの、応接室の場所がわからなくて泣きそうになっていたと。ったく仕方ねぇなー誰だそんな適当な指示を飛ばしたやつは。と思いながらも、すっごい上の立場の人だったらまずいから口には出さないあたり、リスクヘッジがきちんと出来ている。(自画自賛

 

なるほど、こいつの目的はお客様に挨拶することであり、応接室に行くことはその手段なわけだな。なるほどなるほど。
それで、僕の目的はこいつを応接室にたどり着かせることであり、手段としては場所を教えても良いし、一緒について行ってやってもいい。

 

さてどうすると考えた結果、まぁ新人を一人で放っておくのもバツが悪いし、応接室ったって一つじゃない。

 

仕方がないので案内してやるよついてきなこっちだ。

 

んで、意気揚々と新人君をしたがえて応接室へ向かうのですが、若干新人君のリアクションが鈍いのが気になる。

 

ヘイベイベー(流石にこれは盛ってる)、どうしたんだ緊張しているのか。大丈夫だ大丈夫。別に失敗したって殺されやしないし喰われもしない。せいぜいが今日の夜のお酒が増えるかどうかってだけの話だHAHAHA。

 

そんなアメリカナイズされたやり取りは実際にしてはいないんですけど、どうにか新人君の緊張が解ければいいなって頑張ったんですよぼかぁ。健気ですね。

 

それでそのまま空回りした努力を続け、無事に応接室にご案内あそばしたのですが、応接室の前に部長がセッティングされており、新人君を見るなり、「お待ちしておりました」「すいませんわかりにくくて!」と低頭平身。いやちょっと待て。そのつまり。

 

案内してきた僕に対し、若干目を細めたかと思うと、顔を歪めて一瞥。最終的には見なかったことにしたらしく。新人君と応接室に消えていき。

 

ここらへんで新人君が新人君ではなく、更に言うなら部長がヘコヘコするような立場の人で、もっと言うならお客様だったことに気がついた、クロックスにノーネクタイ、ジャケットの代わりにカーディガンを羽織った男が一人。

 

えー…。それは、聞いて、なくない?

 

そのまま怒られるのが嫌でトイレに籠ってました。

 

まぁ何が言いたいかって言うとですね。手段と目的の把握に力を注ぎすぎて、思い込みで状況判断するとえらい目に合うっていう話ですよ。

 

割とね、マーケティングの現場を見ているとそういう「根本的なハナシ」を度外視しちゃってる人を見かけます。

 

別段この業界に限った話ではないのですが、追い込みで視野が狭まって完成度を高めている段階で、一旦力抜いて一歩下がって全体を見てみるってのも必要なことなんじゃないかと思うんですよ。

 

昨今の新型コロナにしたってですね、「やらなきゃいけないこと」と「その目的」に固執するのもいいんですけど、視点がね。固まり過ぎちゃうのも良くないですから。

 

今一度ね、自分に必要なことを、見直してみるっつーのもいいんじゃないでしょうか。