月刊ハコメガネマガジン

好物はカレー。

うちの両親は両方共大音量であるという話

カプセルホテルに、過去何度か泊まったことがある。


今どきのカプセルホテルというのは、それこそ昔のドラマや漫画で出てくるような上下二段にずらりと口を開けて並んでいるような、安いSFの宇宙船のような外観ではなく、デザインという名のもとに、機能性とプライバシーを重視して作られている。もちろん、明かりだって煌々とオレンジ色に浮かび上がる裸電球でなく、間接照明が薄暗い感じでフロアを照らしています。

イメージの乖離というものは、多分どんなことにもあって、ステレオタイプなカプセルホテルなんて、もしかしたらどこにもないのかもしれない。

終電を逃したヨレヨレのサラリーマンの代わりに、お前明らかにカプセルに入らねぇだろというガタイの良い外国人が肩で風を切って歩き、特に東京や京都のカプセルホテルやゲストハウスは、多国籍の様相を呈しているらしい。いや、自分が東京のカプセルホテルに泊まったときだって、聞こえてくるのは英語とドイツ語と韓国語で、正直日本語なんて全く聞こえてこなかったので、これは正しい情報なんだろうと思う。

別にそれがどうこうというつもりはまったくなく、いやまぁ流石にカプセルホテルの共用部でホットプレートを持ち出してチヂミ焼き始めたグループはどうかと思わないでもないんですけど、そこらへんの雑多な感じがカプセルホテルですよね。ええ、褒めてはいませんあしからず。

しかしですね、一番の問題は別にあります。

問題は、いびきです。

いえ、根が深い問題。これはとても根が深い問題だと思うのですよ。言うならば人類共通の、場合によっては命にも関わる重大な問題だと認識しています。神はバベルの塔の不遜に怒り、人々の言語を様々に分けたと言われていますが、いびきを分けることはしなかった。いやまぁ言葉じゃないですから、分けるもクソもないことは百も承知なわけですが。とにかく日本人だろうと外国人だろうとうるさいものはうるさい。

ええ、大学生の時分から不眠症(熟眠障害)を患っている身ですので、睡眠環境に物申したいのはやまやまなんですが、カプセルホテル選んでるのは自分自身ですからね。普通のホテル選べばいいだけなので、「うるさいから静かにしろ」みたいなことは申し上げません。

いびきをどうのというのは、耳栓したり何なりで対応すればいいっちゃいいのです。個人的に耳栓なんかする時になっちゃって眠れないタイプ、いやそもそもカプセルホテル泊まるとかプライベートの旅行の時ぐらいでして、テンション上がっちゃってだいたい寝れないので(小学生)、どうしても耳に入ってくるんですけど、まぁこれが気になる。

繰り返しますが、五月蝿さに辟易しているわけではないのです。

心配しているのはですね、無呼吸症候群なんですよ。

カプセルホテルなんてね、妙齢のお姉さんなんていやしないんですよ。少なくとも豊さんが泊まるようなところには。必然的におっさんばっかりと相成りまして、いびきのオンパレードです。

で、やっぱり多少なりとも聞こえてしまうじゃないですか。いきなり止まったら気になるじゃないですか。おいこいつ死んでんじゃねぇのかって。

しかもそれが複数人で大合唱ですからね。安否確認が大変。こちとらいびきだけで個体判別してるんだよ。もうちょっとわかりやすく…新個体だと!? みたいな。

先日もですね、スーパー銭湯の仮眠スペース(終電逃した)で寝転がりながらソシャゲしてましたらですね、やっぱり聞こえてまいりまして。

スーパー銭湯の仮眠スペースって、要するにかなりオープンなスペースで、区切られているわけでもないですし、防犯上全くのザルな状態なので、みんな着の身着のまま寝てるんですね。

これが一体どういうことかというとですね、つまりは無呼吸症候群の患者の皆さまを直接見守ることができるわけですよ!

おおこれはちょっとテンションが上ってきたぞということで、薄暗い仮眠スペースをうろうろと回りまして、皆様の無事を確認して回っているとですね。


普通に警備員呼ばれた。


冷静に考えれば怪しすぎますよね。仮眠スペースをウロウロする男。明らかに犯罪臭しかしません。ええ。それは私もそう思います。

かくして、煌々と明かりの灯る事務所へ連行されまして、「無呼吸症候群の方が気になりまして」「は?」というやり取りを延々と続け、朝までかかってようやく釈放されました。イヤホント警察呼ばれなくてよかったんですけど、僕の主張を聞く警備員の方々の冷めた目線はしばらく忘れそうにありません。

もういびきに意識を向けないように固く心に誓ったのですが、そうするとただ五月蝿い騒音になるというジレンマ。

やっぱ五月蝿いですよね、いびき。