月刊ハコメガネマガジン

好物はカレー。

思えば、使用頻度が恐ろしく低いことわざだという話

この正月にかるたをやった。


あまりに久しぶりすぎて、前にやったのはいつだろうと思い返してみたら、小学生の時分に冬休みに百人一首を丸暗記させられた過去が思い返された。ただでさえ短い冬休みに、古文の意味もクソもわからない小学生が百人一首を丸暗記である。私は早々に投げ出し、百人一首を普通のかるたとして遊んでいた。

だいたい、絵面がおかしいと未だに思うのだ。なんで絵が書いてあり、きらびやかな装飾が施された絵札が読み札で、そっけなく字だけ描かれた字札を取るのだ。子供心に絶対におかしいと思っていた。いや、今でも多少おかしいと思っているが。

大人になり、「まぁそういうこともあるわな」ぐらいの気構えを身に着けた今となっては、百人一首というゲームが「絵柄を集めるもの」ではなく、「自らの知識を競い合うもの」であることは認識しています。つくづく私の小学生時代には似合わないゲームです。

その点かるたはいい。小学1年生でも無理なくできる。取り札は可愛らしいデザインであり、多く集めたいと自然に思わせることができる。文章を探さなくても、頭文字さえわかれば探せる。実にシンプルなカードゲームである。キャラクターものだとなおいい。

そんなかるたを正月に従兄弟相手に遊び、小学生相手に30歳のオッサンがマジになるという地獄絵図が広がっていました。アレですね、知識や経験なんかが殆ど必要ない、短期的な記憶力と反射神経の勝負になると、積み重ねた年齢なんか微塵も役に立ちませんね。小学生の反応速度尋常じゃない。

で、その遊んでたかるたっていうのが、よくある「ことわざかるた」だったんですね。頭隠して尻隠さず、とか、馬の耳に念仏、とか書いてあるんですけど、小学生って好奇心強いですよね。取るたびにその言葉の意味を聞いてくる。

そりゃね、こっちだって30歳のいい大人ですよ。ことわざの10や20、楽勝で答えれますよ。…ただ50種類ぐらいともなると自信ないなぁ…どこかに知らない意味の言葉あったりするんじゃないかなぁと戦々恐々していたわけですよ。

で、来ました。

「犬も歩けば棒に当たる」

はお前そんな言葉も知らねぇの文系だろお前っていうか下手したら小学生だって知ってるぞこの雑魚がボキャ貧とかいうレベルじゃねぇぞ一般常識だ一般常識そんなんで社会人している己を恥じるがいいと思われるかもしれませんがちょっと待ってくださいドントステイ。いやドントステイだと意味逆だ。

「犬も歩けば棒に当たる」、ですよ?

このことわざの意味、何?

私の衝撃がわかりますか、当たり前に聞いたことがある言葉だと思うのですが、その意味が分らない。犬が? 歩いて? 棒に当たる? 何だそれ、どういう状況ですか。冷静に考えてわけがわからない。当たらないでしょ。棒。前方不注意がすぎる。

そもそも、犬と棒の間に関連性が見いだせない。河童の川流れ。関連性がある。意味がわかりやすい。豚に真珠。関連性は全く無いけど、これは関連性がないことが意味を持っている。海老で鯛を釣る。これは動詞があることで意味が生まれる例だ。

で、犬、棒、そして歩いてぶつかる…。

分からねぇ…。

そりゃ、スマホを使ってGoogle先生に教えてもらえば正しい知識がすぐに手に入りますよ。しかしこれでも文系の端くれ、それはなんだか負けたような気がする。ない頭を必死に絞って類推してみた答えがこちら。

「人気者でかっこいい(かわいい)犬でも、無防備に外を歩いていると心無い人に棒で叩かれることもあるので、常日頃から気を抜いてはならない」

何ていうんでしょうか。

小学生に伝えるには嫌に現代社会を風刺した意味合いができてしまった。明らかに故事から来ることわざの意味ではないだろこれ。しかし他に思い浮かばなかった。しょうがなくそのまま伝える。小学生は「???」という顔をしておった。うむ。正しい反応である。

とまあながながと「ことわざの意味がわからなかった」という話をしたのだが。結局正解は何だったのかというと、

犬も歩けば棒に当たるとは、でしゃばると思わぬ災難にあうという戒め。また、じっとしていないで、何でもいいからやってみれば思わぬ幸運にあうことのたとえ。

…。

なんでほぼ真逆の意味が一緒くたになっているのかという。

これだから日本語は難しい。