月刊ハコメガネマガジン

好物はカレー。

金縛りとポルターガイスト

金縛りにあったことがない。


いや、「俺今日金縛りにあったんだ! 羨ましいだろう!」という言葉がおかしいのは重々承知している。自慢したがりの小学生でももう少しマシな謳い文句を思いつくだろう。世間一般の常識で金縛りというものはあまり良くないイメージがあり、できれば避けたいと思っているものだろう。

そもそも私は、つい最近までこの金縛りというものを都市伝説のたぐいだと思っていた。夢を見ているだけだろうとか、そもそもそういった現象は言われているだけで確立されていないと思っていたのだ。

それが先日ふと飲んでいる最中に怪談話になった時に判明した。

「え? 金縛りなったことあるの?」
「わりとなるよ。1年に1回くらいかなぁ…」

衝撃である。トナカイは鹿の進化系でドラゴンやペガサスと同じ列で語られるものだと思っていたのに、普通に「いやいるよ。北欧とかに生息してるよ。サンタも乗ってんじゃん」と事も無げに言われたときと同じ類の衝撃を受けた。いやしかし、トナカイの存在証明に「サンタも乗ってんじゃん」と言われるのは未だに納得がいかないのだがどうだろう。

しかも聞いてみれば、結構な人数が金縛りにあったことがあるという。周りの人間に聞けば6人中5人が金縛りにあったことがあるという。ちなみに最後の1人は金縛りの意味を知らなかった。それはそれで衝撃である。

規格外の世間知らずを除けば100%である。何だこの数字は。疎外感すら覚える。なんで今の今まで黙ってたんだと詰め寄る私に「いやだってそんなの自分から言わないでしょ。珍しいことは珍しいけどほぼ恐怖体験だし」なるほど。確かにそのとおりだ。

好奇心に殺されるネコと化した私は、「怖いんだったら言わなくていいから」という前置きの元、金縛りについて聞いてみた。「いや別に怖いわけじゃないし」とムキになるのを見越しての所作である。何という頭脳プレー。

そして集まった情報は以下のとおりである。

・疲れてる時になりやすい気がする。
・怖いから金縛りにあったと分かったら目は開けない。
・思考能力と聴覚が研ぎ澄まされていくのを感じて、それが恐怖を煽る。
・なりやすい人は慣れる。
・金縛りが解ける瞬間は記憶にない。多分意識が飛ぶんだと思う。
・怖いのは怖いが特に実害はない。

まあ、私の知ってる情報と差異はない。

しかしやはりというか、何人かに話を聞いた感じでは、やはりなりやすい人となりにくい人がいるとのこと。睡眠が関係しているならば、不眠症気味の私がならないのもなんとなくわからないでもない。

世の中にはまだまだ知らないことがある。

「いつか俺も金縛りになる日が来るのかな…」
「なんでちょっとなってみたい風なんだよ」
「そんなこと言ったって気になるじゃんか。ポルターガイストとどう違うのかとか」
「は? お前ポルターガイスト体験したことあるの?」
「うん。誰も居ないのにマウスをクリックする音が聞こえたり、寝てる枕元で枕を叩かれて起こされたり。…え、何、引くなよ」

どうも世間一般では、ポルターガイストのほうが珍しいらしいです。

納得行かない。