月刊ハコメガネマガジン

好物はカレー。

狭い世界での攻防の話

9マス将棋なるものがあるらしい。

通常将棋は9×9の81マス40の駒で戦うゲームであるが、9マス将棋は3×3の9マス、駒の数は2~6個ととてもミニマムなものらしい。

通常の将棋より短時間で遊べる、そもそも場所を取らないからお手軽、でもすごく難しい、と随分際立ったエッジを持っているゲームのようで、私も話を聞いただけではあるが、俄然興味が湧いてきた。

将棋のイメージは軍そのもの、といった風で、自分はさながら軍師であり、諸葛孔明であり、竹中半兵衛である。言い過ぎた。要するに実際には戦わず、軍を動かして個々の駒よりも、軍としての勝利を優先するような戦い方が基本となる。肉を切らして骨を断つような戦略も可能だし、実際、被害なく相手に勝利をおさめることは不可能なゲームである。

が、一方9マス将棋は、言うならば自分の頭と両手だけで戦うようなものである。1対1のノーガードの殴り合いだ。仕掛ける側も守る側も、どかどかと殴り合う様が目に見える。先に手を出した方も、常に隙を見せる形になって、五手ぐらいで勝敗が決まりそうだ。確かに短時間で決着が付きそう。

しかしこれは、逆に考えると、頭の中で全てのパターンが読みきれるのではないか。

通常将棋は常人では絶対に無理だが、9マスぐらいならなんとかなりそうな気がしてくる。

と、ルールさえ把握できれば、とりあえず9マス将棋の盤がなくとも通常将棋盤でできるので、同期を捕まえて早速やってみた。

「なにこれ? 9マス?」
「そう、ここからここまでしか使っちゃダメ」
「で、駒はこれなわけ?」
「そう、動きも、取れば相手の駒を使えるのも通常の将棋と同じ」
「ふーん…」

勝った。相手は将棋そのものもあまり知らないはず。いや私も知らないが。だが、9マス将棋についての解説ならさっきまで紹介記事を読んでいた私に一時間分ぐらいの長がある。勝てる!

「王手」

まあ、勝てなかったわけだが。

すごいのな、将棋ってここまで頭というか脳の能力の差が如実に出るのな。おじさん初めて知ったわ。

曰く、「お前の狙いわかりやすすぎ」とのことだが、いや、これだけ狭い中で狙いも何もないだろう。とりあえず頭狙えば勝てるだろうと踏んだのが間違いだったらしい。7連敗というその事実が私の心を攻め立てる。

9マス将棋、なかなかに奥が深い。

私は勝てないので、もうやらないと思います。