月刊ハコメガネマガジン

好物はカレー。

夜中に屋根に上るのは危険だから気をつけろという話

8月31日と言えば、夜中にプールに忍び込むもの、と相場は決まっている。

無論、30過ぎの男が中学校の立て付けの悪い更衣室のドアノブを無理やりこじ開けてプールに侵入、トランクス一枚で遊んでいれば、それはまごうことなき犯罪行為であり、情状酌量の余地はない。住居侵入罪を筆頭に、盗撮未遂やらおまけにおまけをくっつけられて、御用となる。間違いない。

だが、14歳の中学二年生となると話が変わってくる。

14歳の中学二年生は無敵である。人生において、唯一と言っていいほど無敵になれる。2、3日寝なくても大丈夫だし、授業をサボるのだって自由自在、適切な大人の助けがあれば、なんだって出来る確変タイムだ。まあ、悪事の手助けする大人が「適切」かどうかは置いておいて。

そう、学校のプールに忍び込んでも、転校生からラブレターに見せかけた入部届をもらっても、デートで映画を見て盗んだバイクで走り出しても、文化祭でフォークダンスを踊っても、鉄人定食で吐きそうになっても、女の子と二人で現実から逃げ出しても、それでも生きていける力が、中学二年生にはある。

私の中学二年生を思い出しても、確かに色々あった。色恋沙汰から悪巧みまで、日がな一日全力投球だったようにも思う。

まあ、8月31日には、ご多分に漏れず友人宅で宿題を手分けして片付けていたのですが。「お前数学な」「成績から言って俺が古文だろ」「あ、ずるい分量が少ない!」「おいだれか英語の英訳やれこれ時間かかんぞ!」「ワターシ、エイゴ、デキマセン」「お前は一体どういうキャラで行きたいんだ」「あーもういいから出来るところから手を付けろ! どうせ一日じゃ終わらん! 少しでも空白を埋めろ!」怒号と悲鳴が飛び交い、一向に宿題が進まず。ご丁寧にみんながみんな同じ答えを書くものだから、教師にも筒抜けだった。

結局、休み明けの確認テストで散々な点を取って補習。おまけに宿題が終わってないから追加でドン。9月になっても夏は終わらないとはまさにこのことである。クーラーもない、明らかに教室の空気を循環させるには不十分な首振り扇風機一台で、汗だくになりながら課題のプリントに挑んだ記憶がある。

そして現在の私といえば、エアコンがある部屋という環境改善はなされたものの、その分宿題が増えたようで、わら半紙の代わりにつるつるの無機質なOA用紙と格闘している。

やってることは変わらない。夏は、まだまだ終わらない。

かと言って、夜中のプールには入れない。

仕方がない。大人は大人らしく、家の屋根に登って星空を眺めながら、カップラーメンを食べよう。


…と友人を誘ったら、「キモイ」と一蹴された。ご無体な話である。