月刊ハコメガネマガジン

好物はカレー。

罪深きイガグリ頭の話

アイスが美味しい季節が終わろうとしている。


毎年のごとく猛暑猛暑だと騒ぎ立て、まぁ実際猛暑だと思う。ニュースなんか見ててもどこどこで40度を超えました!とか、熱中症に気をつけてください!とか話題に事欠くことはない。

だが広島在住休みの日は極力家から出たくない家の中で遊ぶの最高の私はといえば、正直そこまでの暑さを経験していない。何なら、8月の下旬に至っては寝るときにエアコンすらつけてない。新幹線の中で一人効きすぎの冷房にジャケットを羽織り、風が強い夜は薄手のパーカーを着て散歩に出かける。

あんたそろそろ死ぬんじゃないかとのコメントを多々いただくのだが、至って身体は健康体、酷いのは肩こり腰痛ぐらいで、後は特に問題がない。

そんな状態ならアイスなんか必要ないじゃないかと、傍若無人にも私が買ってきて冷凍庫に大切に保管していたガリガリ君を強奪しようとした友人と喧嘩になった。

別に私はそこまで心の狭い人間ではない。冷蔵庫の中のビールを勝手に飲まれようが、そのつまみにちょっと高級なチーズを食べられようが、締めにカップラーメンを食べられようがそこまで怒らない。ちょっと食ったわ。今度何か買って来るねーぐらいで問題にならない。よく人が出入りする我が家の冷蔵庫はそういう精神で成り立っている。だがガリガリ君は違う。違うであろう。

風呂あがりにアイスが食えない苦痛が如何程のものであるか、このブログを読んでいる聡明な諸兄なら分かるであろう。風呂あがりのビールでも良い。だが、それ以上にガリガリ君を噛まずに食べきるというのは、夏にしか出来ない贅沢ではないか。

「お前この間「風呂にはいる時にチューペット食べながら入るのがいいんだよね」とか抜かしてたじゃねぇか!」
「それは確かに言ったが風呂あがりのことまでは言ってない!」
「風呂で食ってんだからいいだろ!」
「今日は食べてないもん! っていうか風呂ん中で食べたら風呂あがりに食べちゃいけないっていう論理の繋がりが分からんわ!」
「食べ過ぎは身体に毒だろ! 体冷やすなって教わらなかったのか!」
「女子か! 風呂あがりに体冷やすなもクソもあるか!」
「俺はお前の体のことを心配して」
「健康体だって言ってる! そして自分が喰いたいだけだろ!!!」

コンビニ最安値のアイスをめぐって舌論が繰り広げられる。ちなみに書いておくが両方男である。まごうことなきアラサー男子二名様である。アラサー男子二名が、ガリガリ君をめぐって対立している図である。そろそろパッケージのイガグリ頭が「やめて! 私のために争わないで!」とか言ってそうである。

このまま言い争っていても埒が明かない。というか不毛であるということに気がついた私たちは、妥協策でガリガリ君を真っ二つに分けて食した。大岡裁きを持ち出すまでもなく、包丁にて解決を図ったのだ。爽快感はなかったが、まあそれなりに満足した。

なんとはなしにそのままその夜は終了したのだが、どうも後味が悪かった。そもそも、ガリガリ君を撮り合って喧嘩するなど小学生の所業である。…いや割と高校生でも喧嘩してたな。中学生はチューペットの端っこの部分があるかないかで揉めてたし、大学生はホームランバーを取り合っていた。私とアイスの歴史は常に戦いと共にあるようだ。

だがそれは、限られたお小遣いの中での争いである。一端の社会人として日銭を稼いでいる今、ガリガリ君大人買いだって出来てしまう。

昨日は大人気なかったな…と反省しながら、ガリガリ君大人買いする私。しょうがない今度は分けてやるかと家の冷凍庫にガリガリ君を保存したのだが、同じことを思った友人が、これまた同じようにガリガリ君大人買いしてきた。

似たもの同士じゃねぇかと笑い合い、冷凍庫を開いて、友人のガリガリ君をドサドサと入れる。それは和解の証。そして混ざり合う青と赤のガリガリ君

青と赤。

ソーダと、コーラ。

私の買ってきたソーダ味と、友人の買ってきたコーラ味。


新たなるガリガリ君の争いの火蓋が、切って落とされるのだった。