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白滝ソバおでん風味withハンペン

三十路になった豊さんの日記

コーヒーショップで本を読むのはカッコいいが難しいという話

コーヒーショップが、寒い。

こんなことを書くと、今現在甲子園球場で滝のような汗を流している選手、応援の生徒、それを見守る保護者の方々に刺されそうになるのだが、寒いものは寒い。嫌がらせのレベルなんじゃないかと思うほどだ。

いや、私もたまたま今日はそういう日なのかなと思う程度には謙虚である。あるいは、ここ、エアコンの吹き出し口が近いのかな、と思ったりする。だが、常に、いつも、どこでも。毎回気合を入れた冷やし方で私を待ち構えているのだ。

元々、比較的暑さには強く、寒さには弱いタチだ。まあそれでも日中外を歩いていれば5分に一回は暑いとぼやくが。だが、寒いのはダメだ。アレはダイレクトに体調が悪くなる。

暑い中歩いてきて、オアシス的な役割をコーヒーショップに求めている身としては、それはもうすでに拷問に近い。汗が冷えて冷たいし、外気温との差はぶっちゃけ20度ちかくあるんじゃないかと思う時すらある。ここまで来ると、客の回転率を上げるための店側の罠なんじゃないかと考え出す始末だ。相変わらずひねくれている。

そんなもんだから、「そっちがその気ならこっちにだって考えがあるんだぞ」と言わんばかりに対抗心を燃やすのが私の悪い癖だ。いやわかっている。後になって冷静になるから「悪い癖」だといえるのであって、その時はもはや脊髄反射レベルで負けず嫌いが首を出すのだ。


その日は昼から暇になる予定で、いつもの様に読書にコーヒーショップに行こうと思っていた。

そう、ここ最近の寒さに耐えかねて10分ほどで店を後にするという苦い経験の元、きちんとした装備で挑んだのだ。

すなわち、半袖などではなく、長袖のシャツ、そして万全を喫して鞄の中に薄手のカーディガンをも忍ばせていた。

ここまですれば完璧だろう。今日こそは心ゆくまで本を読めるに違いない。ははは。もう寒さに震えて早々に退散するなどという経験をせずに済む、と意気揚々と家を出たんですよ。

そしたら奥さん、これが暑いのなんの。

当たり前である。外は36度を越そうかという猛暑日。そんな日に長袖のシャツを着て活動すれば、暑いのは自明の理である。小学生でも知ってる。

しかしそこは昼からの読書タイムのため。腕まくりをして乗り切った。まあ考えて見ればスーツ着ててもシャツ腕まくりしてるし。問題ない。問題ない。

そうこうして念願のコーヒーショップ。相変わらず自動ドアをくぐった瞬間から寒い。すでに「おもてなしの心」由来の涼しさでは無い。「回転率を上げるため」由来の寒さだ。相変わらず挑戦的だ。だが今日の私は一味違う。タオルハンカチで軽く汗を拭いた後、コーヒーを注文していざ始めよう。読書を!

快適だった。圧倒的快適。

それでも少し肌寒くなったのだが、鞄の中のカーディガンで事なきを得た。快適とはこの事を言うのだろう。私は気兼ねなくハードカバーの活字へ没頭した。

のだが。

20分ほど経った頃だろうか。どうも周りが気になる。なんだ、なにか起こったのかと思えば、どうも私が注目を集めていた。え、なんで。

そしてここに来て気づく。その違和感に。

店内はクラシックを基調としているが、ディスプレイは夏仕様だ。どうもかき氷の販売を推しているらしく、随分とトロピカルな色あいになっている。極めつけに市民プール帰りの親子連れだろうか。半袖半ズボンでいかにも暑そうな親子が、長袖カーディガンの私に視線をよこしている。

ああ。浮いてるなこれ…。

そんなことお構いなしに読書に没頭できればよいのだろうが、残念ながら小心者の私はそういう訳にはいかない。結局今回も(前とは別の理由で)退散を余儀なくされたのだった。

ありがとうございましたーの声に後押しされ、むあっとした空気に包まれながら、いまさらながらにカーディガンを脱ぎながら私は思うのだ。

正解は、どこにあるのか、と。

とりあえず、暑い。アイスを帰って帰ろう、と。