月刊ハコメガネマガジン

好物はカレー。

オシャレになるにはオシャレな空気を吸わなければならないという話

この世の中にオシャレスポットというものは一体どれだけあるのだろうか。

例えばスカイツリーはオシャレスポットだろう。そこに異論がある人はあまりいないと思う。

だが一方で、墨田区スーパードライホール(例のあのオブジェがある施設だ)は、そこまでオシャレスポットではないと思う。私の美的センスが世界に追いついていないだけかもしれないが、あれをオシャレスポットと言ってしまうのはいささか抵抗がある。古い人間だからだろうか。

微妙なラインで言うならば、フジテレビの球体展望台なんかは、人の意見の別れるところではなかろうか。私としては、あれはオシャレスポットと言うよりはただの観光地だと思わないでもないが。

そんなことを考えていたのだが、先日、知人に衝撃的なことを言われた。


「オシャレスポット? …スタバかなぁ?」


スタバ。スターバックスコーヒー。

盲点だった。まったくもって盲点だった。

いや、盲点というよりかは、気が回らなかったという方が正しい。というのも、私の生活範囲の中にスタバというものが存在しない。いや、職場の近くにはある。無駄に三件ほどある。存在は知っている。だが、入ったことがないのだ。

逆説的にオシャレと無縁な生活を送っていることを証明してしまっているが、確かにスタバはオシャレスポットだろう。だってドトールよりサンマルクカフェよりベローチェよりオシャレな気がするではないか。入ったことないけど。

まったくもってイメージだけで語ってしまって申し訳ないが、まず何よりスタバは注文の仕方がオシャレだ。Lではない。トールなのだ。カフェオレではない。キャラメルマキアートモカフラペチーノなのだ。その二つが同一なものなのかはわからないが、聞いたら「どっちも同じようなもんよ」と言っていたので、間違いはないと思う。そりゃ5文字と18文字では持てる情報量に3倍以上もの違いが出る。疑いようもなく格上だ。

そして席がオシャレだ。聞くところによるとスタバの席にはコンセントが常備してあって、そのコンセントでMacBook Airを充電しながら仕事をするらしい。もしくはipadをスッ…ってやるらしい。フリック音からして違う。勢いのあるシャッではなく、スッ…っというところにエレガントさがにじみ出ているではないか。世界中で圧倒的シェアを持つwindowsが、スタバの中ではMacに負けているというからその凄さがわかろうというものである。

店内ガラスそばの座席は足の長さが強調されるように高い位置に配置され、眩しさしかない接客スキルを駆使する店員さんにカップに一言メッセージを添えられるらしい。話を聞くだけで膝が笑ってしまう。本当にそこは日本なのか。実は店内の共通語は英語とかで、最低限の英語が話せないと、高学歴の店員さんが気を使って日本語で対応してくれるとかじゃないのか。そんなところに入り浸って価値観が瓦解しないのか。

「…またアンタが変な方向に妄想を働かしてるのはわかるけど、普通のとこだからね」

エスパーかこいつ。


ともかく、先の一言によって、私の長年の問いに、スタンダードな答えが用意出来たのだ。

だから私は、次に聞かれたらこう答えようと思っている。


オシャレスポットは、スタバの数だけあるんだよ、と。