月刊ハコメガネマガジン

好物はカレー。

どっちにしても確実に身体には良くないという話

朝起きてアイスにするかビールにするか論争というものがある。


世間一般の話ではない。私のごく身近な者達の論争だ。要するにダメ人間の集まりである。

日頃の鬱屈したストレスが変な方向に作用してはっちゃけてしまった真夏の休日。嫁子供は実家で今日は一日誰にも邪魔されないというシチュエーションで、さぁここからどうするという話になった。

「「甲子園を見る!」」

うむ。正しい。全くもって正しい夏の過ごし方である。白球を追いかける球児の視線に、自らの青春を重ねながら、試合の行方を見守る。時には涙もあるだろう。甲子園というものはそれ自体がドラマである。素晴らしい。ここまでは良い。

そして続く言葉が救いようがない。

「ビール飲みながら!」
「アイス食べながら!」

見事にまっぷたつだった。

そして、健全な朝食をとるという選択肢は微塵もなかった。「朝からそんな事したら内蔵冷えて身体に良くない? 甲子園見てるんだから大丈夫だよ」などという謎の理論武装で猪突猛進、突如として生まれたビール派とアイス派が衝突した。

私個人として言うなら別にどっちでも問題なし、何なら馬手にビール弓手にアイスを携えて、テレビの前にどっかりと腰を下ろして試合を見守るのもまったくもって問題はないのだが、そんなことを言おうものなら第三勢力としてこの戦いに巻き込まれ、カレーの中のみじん切りにされた玉ねぎのごとく存在感なく消えていくこと必至であった。口は災いの元、永世中立国を気取り糸目で無言を貫くことを腹に決める。

「野球見るならビールは欠かせないだろ! 寝て起きたら汗かいて水分が減ってるから水分補給しないといけないし!」

主張はわかるが、後半については確実にアルコールで摂取しないほうがいい。アルコール濃度が高くなるだけだ。

「ビールは腹に溜まるから量食べれないじゃん! 体の体温を下げるにはアイスが一番だよ!」

論点が最初っからずれている。一体どれだけアイスを食べる気なのか。暑いならシャワーを浴びなさい。

「甘ったるいんだよアイス!」
「甘くないのあるもん! アイスBOXとか!」
「あー…あれか。あれは美味いよな」
「あれ普通の氷として使うとまたおいしいんだって」
「あ、そういえばこないだラジオでスミノフをアイスBOXで割るとおいしいって聞いた」
「なにそれ美味しそう…! ガリガリ君チューハイと比べ物にならない」
「ああ、アレはないな。美味しくない」
「球場のもイマイチだよね…」
「でもやっぱ球場で飲みたいなー」
「ねー、球場でビール飲みたいー」


何だこの茶番。

書き出してから果たしてこれは記事のネタとして扱っていいレベルのものなのか。ほぼ何の価値も産まない脊髄反射だけで会話しているだけのこの会話でなにを得られるというのか、少々自問自答したが、そもそもこのブログにそんな大層なものを求めてなどいないので問題なかった。

結論としてビールでもアイスでもどっちでもいいとりあえず野球ならビール飲みたい。寝起きにーとか、アイスの種類ーとかちらほら言ってはいるみたいだが、どうにも熱が冷めたようで、徐々に職場の空気も元に戻っていった。

…仕事を、しよう。私は遠くを見ながら静かに心に思う。