アイスキャンディーにおける柔らかさの表現の話
スーパーに買い物に行った時のことである。
「ねーねーこんなのあるよ!」
「何?」
「フルーツぷるんぷるん!」
「……え?」
「あはははは、何これ!」
フルーツぷるんぷるん、である。
スーパーのアイス売り場の脇に鎮座しておられるのは、まごうことなきフルーツぷるんぷるんであった。
そしてそれを指さして笑う女。なんちゅう図だ。
しかしてその正体は、いわゆるチューペット、家庭の冷凍庫で冷やして固めてアイスとして食べる、幼少期に誰もが目にして口に入れたことのある、何の変哲もないものではある。
だがしかし、ぷるんぷるんである。
桃が、メロンが、スイカが、ぷるんぷるんである。
私は桃ぐらいが好きだが。
断じて他意はない。私は今、アイスの話をしているのだ、
いやしかし、いったいどのあたりがぷるんぷるんなのか。先に言っておくが、私はこの件に関して若干の憤りを感じている。
チューペットといえば、子供のころに食べる前にチャンバラに使ったレベルで硬いものである。何なら一本あれば人一人殺せるだけの殺傷能力を兼ね備えているレベルで硬い。これでぷるんぷるんと言い張るのはいささか詐欺が過ぎるであろう。「筋肉質だから、少し張ってるのよ」とは女の談だが、そんなわけがあるか。筋肉は筋肉でよいところがある。
さりとて、解凍状態のものをぷるんぷるんというのもまた無理がある。凍らしているよりは確実に柔らかいものであるが、ぷるんぷるんとはいかない。せいぜいがぷりんっである。張りがあるとはこういうことを言う。もしくはぷにぷにである。二の腕やおなかあたりが妥当か。いやアイスの話だった。失敬。
ぷるんぷるんとは例えば、直接触らない状態で、そのものが乗っている台座を揺り動かせば、それに一拍遅れで続いて揺れ動く程度の柔らかさ、そう、水の含み具合というか、そういったものが必要になる。
それを、分厚いチューブに入れられた状態で、しかも凍らせて食べることを推奨している食品において、商品名に冠するほど主張するのは、やはりおかしいと思う。
プッチンプリンか、こんにゃくゼリーレベルであるべきだと私は思うのだ。
という主張に対して、「相変わらずキモイ」と一言で切って捨てられた。
…自分でもそう思うかな…。